災害発生時、介護施設では一般的な被害に加えて、特殊な課題に直面します。最も深刻なのが利用者の避難に関する問題です。実際の災害時には、身体機能の低下により自力での避難が困難な方が多く、介護スタッフの支援が必要不可欠となります。しかし、夜間など職員が少ない時間帯に災害が発生した場合、全ての利用者を安全に避難させることが極めて困難になります。また、認知症の方が環境の変化により不穏になるケースも報告されており、避難所での生活に適応できない事例も多く見られます。
医療や介護に必要な物資の不足も重大な課題です。過去の災害事例では、おむつや医療用品、経管栄養剤などの介護用品が不足し、利用者の健康管理に支障をきたすケースが報告されています。特に、電気や水道が止まった状況下では、入浴や排せつケアなど、基本的な介護サービスの提供さえ困難になります。また、定期的な投薬が必要な利用者の薬が不足したり、医療機器の電源が確保できないなどの問題も発生しています。
情報の遮断も施設運営に大きな影響を与えます。通信手段が途絶えることで、利用者の家族との連絡が取れなくなったり、必要な支援要請ができなくなったりする事態が起こっています。また、避難指示などの重要な情報が適時に入手できず、避難のタイミングを逃してしまうケースもあります。特に、夜間や休日の災害発生時には、職員の参集や応援要請に時間がかかり、初動対応が遅れる傾向にあります。
これらの課題に対応するためには、実践的な避難訓練の実施や十分な備蓄品の確保が必要です。また、地域の医療機関や他の介護施設との協力体制を構築し、災害時の相互支援の仕組みを整えることも重要です。過去の災害事例から学び、起こりうる問題を予測して対策を講じることで、被害を最小限に抑えることができます。施設の立地条件や利用者の特性に応じた具体的な防災計画の策定が求められています。また、このようなサイトを事前に読んでおくことも重要です。